今年から天皇誕生日が2月23日となりました。昨年末の12月23日が平日だったことに気づいていましたか。あれ?「昭和の日」とか「みどりの日」ってどうなったんだっけ…。自分の誕生日は忘れないけれど、人の誕生日は意外と覚えていられないというのが人間というものなのでございます。 
 さて、その天皇誕生日にちなんでご紹介するのが『<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている』香山リカ(ちくま文庫)です。現在の皇后陛下、雅子さま。そのご結婚からご出産、そしてご病気…一挙手一投足が国民に見守られ/監視され続ける存在である彼女は、現代を生きる女性たちの写し鏡でもありました。キャリアより家庭を選び、出産や子育てに苦悩し、さまざまなバッシングを受けながらも歩み続けるその姿からは、いまだ“自由”からは程遠い日本の女性たちの姿が透けて見えます。「なぜ私たちはこんなに苦しいのか」を雅子さまのたどった道のりから解き明かしていく一冊です。著者が精神科医ということもあって推測の域を出ない考察ではありますが、それであるがゆえに共感度数が高めの読後感を得ることができます。
  そして、同じく精神科医であるの宮地尚子の子育てエッセイ『ははがうまれる』(副音館書店)。雅子さま(≒私たち)に手渡してあげたくなるような、やさしい視線に満ちた文章です。子供が生まれる、ということは同時に「はは」なる存在もそこに生まれ出るということ。子供に対してやさしい存在でありたいと思っているのに、日々の忙しさの中で「ちゃんと子供と向き合えていないかも」「こんな子育てでよいのだろうか」そんな、そこはかとない不安を抱えながら頑張っている「はは」たち。でも、そんなに構えなくてもいいんだよ、とそっと寄り添って心をほぐしてくれるような言葉の数々からは、著者が取り組んできた「トラウマ研究」の成果の片鱗がうかがえます。 
 子どもがいてもいなくても、キャリアがあろうがなかろうが、私たちは同時代に生まれて共に生きている仲間。この二冊の本からは、そんな“連帯”を感じ取ることができました。 (小笠原千秋)
※ 「ブック・カウンセリング」とは、様々な       
  “事柄、モノ、人”などにマッチする本をお勧めする事業です。