クリスマスもハロウィーンも、外国の祭りなのに一体なんやねん!と憤っている方も多いと思われるこの季節。なぜ日本人がクリスマスに浮かれるのかを探っていくと、面白い歴史が垣間見えてきましたよ。
 『クリスマス どうやって日本に定着したのか』クラウス・クラハト/克美・タテノクラハト(角川書店)は、日本思想史を研究するドイツ人が記した、初めての日本クリスマス通史。「キリスト教徒でもない日本人が、なぜクリスマスにこんなにもエキサイトするのか?」という疑問から、キリスト教が日本に伝来した1549年(ザビエル!)に遡って、日本がクリスマスを受容していった過程を探る本です。クリスマスに浮かれ騒ぐ文化は戦後の風習のように思っていましたが、いやいや、明治期からお雇い外国人たちによってすでに日本に持ち込まれていたのです。しかし、そこには宗教理解がまだなく、日曜学校の教材には、ほっこく北国のおやじ老爺  <三太九郎>として奇妙な身なりのサンタクロースが描かれ、クリスマスの祝会には蜜柑で作られた十字架が飾られ、なんとも珍妙な光景が繰り広げられていた様子。(ぜひ掲載されている写真をご覧あれ!) 
 クリスマスが宗教的ではなく、世俗的な祝いの意味のほうに傾いているのは世界的な現象ですが、日本では明治政府が政教分離の意味合いから宗教と祭りを“切り離した”のではないかという指摘も興味深いポイント。 クリスマス=家族/恋人と過ごす日、という風潮も、日本の景気動向を背景にマスコミによって作られたイメージであって、大した意味はないわけです。ドイツ人の冷静な分析を経てみれば、クリスマスムードに翻弄されることも、斜に構えて突き放すことも、どうでもよくなってきます。
  さて、今年のクリスマスはどうやって過ごそうかとお考えのあなたに、もう一冊ご紹介。ご存じクリスマスのバイブル、ディケンズの『クリスマス・キャロル』。こちら、子供向けの簡略化されたストーリーでご存じの方も多いと思いますが、ぜひ光文社古典新訳文庫で再度読んでみていただきたい!冒頭の主人公スクルージの守銭奴っぷりと、最後の鮮やかな改心の様子に顎が外れそうになること間違いなし。道徳の教科書みたいで気に食わないと思う方は、最後の解説まで読むことをお忘れなく。年末に自分の人生を見つめなおすのにも役立つ一冊です。(小笠原千秋)
※ 「ブック・カウンセリング」とは、様々な
      “事柄、モノ、人”などにマッチする本をお勧めする事業です。