

ウイルスという脅威にさらされ、そして、あらゆるものの自粛という見えない圧力の中で息も絶え絶えの皆さん。つらい日々ではありますが、私たち「よりみち文庫」の界隈には、“読書”という強力な武器があることをお忘れなく。今回ご紹介するのは、自分の力でこの世界を力強く生き延びる方法を教えてくれる本たちです。
加村一馬『洞窟おじさん』(小学館)は、小学生の時に虐待から逃れて銅山跡の洞窟に住み始めた少年が、40年もの間、山でウサギを狩り、川で魚を釣りながら生き延びてきた驚異のノンフィクション。リリー・フランキー主演でドラマ化もされたので、ご存じの方も多いと思います。鉄砲もないのにイノシシを捕まえて屠り、山野草を売っては大儲け…。文明とは無縁で、人との付き合いもほとんどない中でも、人はこんなにもたくましく生きられるものかと度肝を抜かれます。色々あって人里に戻ってからの人生もまた味わい深く、人と直接会うことが難しい今だからこそ読んでほしい一冊です。
坂口恭平『独立国家の作り方』(講談社現代新書)もまた、家というものを持たないホームレスの人たちの生活を通して「生き延びるすべ」を学べる本です。なんでもお金で買えてしまうから、私たちは工夫や思考することをしなくなってしまったのではないか――そんな問いを持って社会を見てみれば、逆に、工夫や思考することによって私たちは様々なものを(タダで)手に入れられるのです。発想の転換こそ、資源!目からうろこが落ちまくる読書体験ができます。
マスクも消毒剤も娯楽もないけれど、そういう不便を工夫によって楽しみに変えることこそが、本質的な人間の生きる喜びなのでは?そんなことを感じさせる2冊の本。退屈な自粛生活を転換させるヒントになればと思います。 (小笠原千秋)
※ 「ブック・カウンセリング」とは、様々な “事柄、モノ、人”などにマッチする本をお勧めする事業です。